NYスタイルのチーズケーキの愉しみ

  当店の人気メニューの一つ「ニューヨークスタイルのチーズケーキ」・・・

 

 ほんの少し塩を感じるサブレ生地を底に敷いて、

クリームチーズ、砂糖、卵、生クリーム、サワークリーム、レモンをすり混ぜて、

低温で焼いたベイクドチーズケーキです。

焼き過ぎないで、真ん中どころがトロトロの状態で焼き上がるよう心がけています。 

 

   クリームチーズと生クリームの濃厚な味わいとともに、

レモンジュースとサワークリームが加わることでさっぱりとした口当たりと軽い後味にもなっています。

また、バニラビーンズの香りがクリーミーな甘さを、

みじん切りしたレモンの皮がチーズの酸味を引き立てています。

塩も大事な引き立て役で、ほんの少し加えることでそれぞれの素材の味を活かしながら、

全体をキリッと調和させる働きがあるようです。

 

あとひとつ、当店ではかくし味に「リレ・ブラン」という洋酒を使っています。

 

 

 

 

  「リレ・ブラン」はセミヨン種のフランスボルドー産

 

ワインをベースに、フルーツリキュールをブレンドし、

 

ボルドーのグランクリュワインと同等の手間ひまをかけ、

 

フレンチオーク樽でじっくりとおよそ12ヶ月熟成させた

 

アペリティフワイン。


   軽い酸味とほのかな甘みと苦みが舌をやさしく

 

刺激し、上品かつ優雅な味わいがあります。

 

また葡萄のリキュールとしてカクテルにも

 

幅広く応用されています。



 

何がどう効いているのかよく分かりませんが、卵やバニラとの相性が良いらしく

加えるとチーズケーキの香りが、動物臭くなく植物や果物のようなピュアな香りになるように感じます。

 

当店ではケーキやタルトに、香りやコクを加えるために、

アクセントとして洋酒をほんの少しですが時々使用します。

 

この「リレ・ブラン」は何がどうなの?って、今もってよく分かりません。

でも確実に何か違うのです。これもお菓子作りの愉しさです。

 

 

               ボンド・マティーニ(ヴェスパー・マティーニ)

  このお酒を知ったきっかけは、

イアン・フレミングの007シリーズの「カジノ・ロワイヤル」

(小説は1953年、映画は2006年ダニエル・クレイグ主演)で

ジェームズ・ボンドが頼んだカクテル「ドライ・マティーニ」

別名「ヴェスパー・マティーニ」


ゴードン・ジンを3に、ウオッカを1、キナ・リレのヴェルモットを1/2

氷みたいに冷たくなるまでよくシェイクして、深いシャンパン・グラスに注ぎ、

うすく大きく切ったレモンの皮を・・・。」とレシピまで細かく指定していました。


このマティーニ、ボンドの恋人役(ボンド・ガール)として登場する

ヴェスパー・リンドの名前から「ヴェスパー・マティーニ」とも呼ばれています。

 

 

ボンドは映画ではさまざまなマティーニを注文しているため、

ヴェスパーのみが「ボンド・マティーニ」というわけではないようです。

いわば「ボンド・マティーニ」の原型と言っていいかもしれません。


たとえばボンドの有名な台詞(せりふ) "Vodka Martini,Shaken,Not stirred".

(「ウォッカ・マティーニを。ステアせずにシェィクで」)

ジンとウォッカを混ぜるのも珍しいカクテルで、

シェイクすると空気が入って口当たりが柔らかくなるので、

深いシャンパン・グラスにたっぷりと注いで大きく飲むには都合がよいカクテルですが、

「キナ・リレ」のヴェルモットって何?


調べたところ、キナが入ったリレは残念ながら現在は製造されていないようですが、

その後継が『リレ・ブラン』ということで早速買ってみました。


作家の東理夫さんのエッセイ『グラスの縁から』の中の「ヴェスパー・マティーニ 世界平和を願って」では、


007の原作者イアン・フレミングが、

もしかしたら英米仏がソ連と対立する冷戦時代に、

イギリス産のゴードン・ジン、フランス産のキナ・リレ、ロシア産のウォッカ、

 米国カリフォルニア産のレモンを合わせるカクテルを

「世界平和の願いをこめ」て発案したのかもしれない、と推理しています。

なるほどねぇ・・・。


NYスタイルのチーズケーキから派生した薀蓄話、これもまた愉しです。

このチーズケーキ、ボルドーのセミヨンやミュスカデ種を使った白ワインなんかと合わせても面白いかも。